2017/06/10

◆ご案内

次回の「グレゴリオ聖歌研究会」のご案内です。

日時:2017年6月24日(土)18時~20時(休憩あり)
場所:南山大学ロゴスセンター
対象:学生

前回の前半は、6月4日(日)が今年の聖霊降臨祭だったことにちなみ、続唱「聖霊 来てください Veni sancte Spiritus」を、一節ずつテキストを味わいながら歌いました。
コーヒーブレイクをはさみ、後半は、降誕祭の聖務日課より「おお 大いなる神秘よ O magnum mysterium」の練習でした。「大いなる神秘」「驚くべき秘跡」の内容を味わいながら歌ってみました。

次回も引き続き「聖霊 来てください」「おお 大いなる神秘よ」を歌います。

初心者、見学者、途中からの参加も大歓迎です。どうぞお気軽にお立ち寄りください。一緒に学びにましょう。資料や楽譜はご用意いたします。

次回以降の練習はこちらです。

グレゴリオ聖歌研究会「牛とロバ」


2017/05/25

◆ご案内

次回の「グレゴリオ聖歌研究会」のご案内です。

日時:2017年6月10日(土)18時~20時(休憩あり)
場所:南山大学ロゴスセンター
対象:学生

前回は「聖母月」にちなみ、有名な聖母賛歌をいくつか歌いました。特に「Ave regina caelorum めでたし 天の女王」では、角型四線譜から古ネウマを読みとり、これを実際に白紙に描いて(in campo aperto)歌ってみました。ことばや、これと結びついた旋律、音楽がしなやかに運ばれてゆく、そんな実感をもつことができました。

次回から、少しづつ待降節や降誕祭の聖歌に入ってゆく予定です。

初心者、見学者、途中からの参加も大歓迎です。どうぞお気軽にお立ち寄りください。一緒に学びにましょう。資料や楽譜はご用意いたします。

次回以降の練習はこちらです。

グレゴリオ聖歌研究会「牛とロバ」

◆bos et asinus 牛とロバ (3)

( bos et asinus 2 の続き)

それにしても、けなげなのは牛とロバです。というのも、『黄金伝説』によれば、牛はヨセフとマリアの人頭税と家族の旅費と生活費の支払いのために売られてしまいますし、ロバは身重のマリアさまをナザレからずっとお乗せしたうえ、さらにベツレヘムからエジプトへ、そしてエジプトから故郷ナザレへと、その長い行程を、むずがるイエスさまと我が子をあやすマリアさまを乗せて、柔和な足取りで黙々と進んでいったのですから。

そんな「牛とろば」のことを歌ったグレゴリオ聖歌があります。ビクトリアやローリゼンなどのモテットで有名な「O magnum mysterium おお 大いなる神秘よ」です。主の降誕(クリスマス)の祭日の朝のお祈りで歌われていました(朝課の第4朗読後の応唱)。

おお 大いなる神秘 
賛嘆すべき秘跡よ
主がお生まれになり
飼い葉桶に安らいでおられるのを
動物たちが見ていたとは!
幸いなおとめ
ふさわしくも その胎に
主キリストをお宿しなった方
アヴェ マリア 恵みあふれるお方
主はあなたとともにおられます

テキストをみれば明らかなように、「おお」と応唱が驚くその内容は、主がお生まれになって飼い葉桶に安らいでいらっしゃることではなく(これもまた神秘には違いありませんが)、むしろそうした救い主のご誕生のさまを「動物たちが見ていた」というところにあります。人間に劣る動物たちが、人間に先んじて救い主に見える(まみえる)恵みに与るとは!という驚きです。

さらに言えば、動物たちにしてみれば、先ほどのニュッサのグレゴリオスが言うように(bos et asinus 1 をご覧ください)、牛とロバが干し草が欲しくて飼い葉桶をのぞきこんだら、その干し草の上に、自分たちをさまざまな束縛から救ってくださるお方が「秘跡のパン」として安らいでおられた、という驚きでもありましょう。これこそ「大いなる神秘」「賛嘆すべき秘跡」と、聖歌は歌っているのです。

「おお 大いなる神秘よ」は、感謝をこめて、貧しく貶められた存在との連帯を極みまで生き抜いたイエスの生涯のはじめを歌っています。こうして味わってみると、なぜ聖歌が「動物たち animalia」という言葉に、応唱部分では唯一となる最高音を配し、慈しみをこめて念入りに歌っているのかも了解されてくるように思います。


(https://gregobase.selapa.net/chant.php?id=3163)

なお、この聖歌の中間部のVersus(唱句)は、簡便版聖歌集『Liber Usualis』では、天使ガブリエルのマリアへのお告げの言葉になっていますが(Ave, Maria, gratia plena... 上の楽譜をご参照してください)、中世の多くの写本では、伝統的なイザヤ書とハバクク書の引用句で構成されています。この聖歌で歌われる「動物たち」は、やはり「牛とロバ」なのです。

主よ あなたの知らせを耳にして
畏れにとらえられました
あなたのみわざを目の当たりにし 驚きました
二頭の動物の間に(あなたのみわざを見て) 
(ハバクク書3章2節,イザヤ書1章3節参照)
Domine, audivi auditum tuum,
et timui:
consideravi opera tua, et expavi.
In medio duorum animalium.

アウグスチヌスは、ある年の降誕祭の説教で、イザヤ書1章3節に登場する「ロバ」に次のように語りかけました。
「さあ飼い葉桶をごらんなさい。(そこで安らいでおられる)主に乗っていただくことを恥ずかしがってはいけません。あなたはキリストをお運びするのです。あなたはもう道を誤ることはありません。なぜならあなたは「道であるお方」(ヨハネ福音書14章6節参照)をお乗せするのだから。」(「説教」189, 4)
わたしたちも、イエス降誕の物語を歌うときには、このロバのように、謙虚に、でも恥ずかしがらず、誇りと喜びと感謝をもって、テキスト(みことば)を運びたい。「牛とロバ」にはそんな意味が込められています。

(終わり)
by jun nishiwaki